🦷 「噛めない」が引き起こす栄養不足とは?管理栄養士が解説|大崎の歯医者
とくに高齢の方では低栄養につながることも。
しっかり噛める環境を整えることが、栄養バランスの良い食事の土台になります。
こんにちは。
品川区JR大崎駅から徒歩4分、大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室で管理栄養士・歯科助手を務めている竹内です。
突然ですが、こんな心当たりはありませんか。
「歯が痛くなってから、硬いものを避けるようになった」
「入れ歯にしてから、お肉をあまり食べなくなった」
「気づけば、うどんやパンばかり選んでいる」
歯の痛みや入れ歯の不具合などで噛む力が落ちると、知らないうちに食事の内容が偏り、栄養不足につながることがあります。
診療室で患者さんのお話をうかがっていても、「やわらかいものばかり食べてしまう」という声は本当に多いのです。
この記事では、管理栄養士と歯科、両方の視点から、「噛めない」ことが食事と栄養にどう影響するのか、そして今日からできる対策までをやさしく解説します。
「噛めない」と、食事はこう変わります
まず変わるのは、食材の選び方です。
噛みにくさを感じている方は、お肉や生野菜、根菜などの比較的硬い食品を、無意識のうちに避けるようになります。
その結果、やわらかい麺類やパン、ごはんなど、炭水化物中心の食事に偏りやすくなります。
ここに落とし穴があります。
ごはんや麺でお腹は満たされるので、ご本人は「ちゃんと食べている」と感じていることが多いのです。
エネルギーは足りていても、体をつくる栄養素が足りていない——この状態は、見た目では気づきにくい偏りです。
炭水化物に偏ると、どんな栄養が不足する?
結論からいうと、不足しやすいのは「たんぱく質」と「ビタミン・ミネラル」です。
お肉や魚を食べる機会が減ると、筋肉や皮膚、粘膜、それに免疫の働きにも関わるたんぱく質が不足しやすくなります。
野菜やきのこ、海藻が減ると、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足します。
さらに、噛む回数が減ること自体にも影響があります。
噛む機会が減ると、噛むための筋肉や舌・口まわりの機能が使われにくくなり、さらに噛みにくさを感じやすくなることがあります。
とくに高齢の方では、この偏りが続くと、体重や筋力が落ちていく「低栄養」のリスクを高めてしまいます。
「硬いものが噛みにくい」「食べこぼしが増えた」といったお口のささいな衰えは、オーラルフレイルと呼ばれ、全身のフレイルや低栄養との関連が報告されています。
理想は「主食・主菜・副菜」のそろった食事
では、どんな食事を目指せばよいのでしょうか。
主食(ごはん・パン・麺類)、主菜(肉・魚・卵)、副菜(野菜・きのこ・海藻類)がそろっていて、エネルギーだけではなく、たんぱく質・ビタミン・ミネラルも十分に摂取できている状態が理想です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、たんぱく質の1日の推奨量は18〜64歳の男性で65g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gとされています。
また、1日のエネルギーに占めるたんぱく質の目標量は、18〜49歳で13〜20パーセント、50〜64歳で14〜20パーセント、65歳以上で15〜20パーセントとされています。
年齢が上がっても、たんぱく質をしっかりとることの大切さは変わりません。
目安として、卵1個でおよそ6g、納豆1パックでおよそ7〜8g、魚の切り身1切れでおよそ15g前後のたんぱく質がとれます。
主菜を毎食1品そろえることが、たんぱく質確保の近道です。
噛みにくくても、栄養を落とさない工夫
「噛めるようになるまで、栄養は我慢するしかないの?」——そんなことはありません。
やわらかくても栄養のある食材と調理の工夫で、食事の偏りを減らしやすくなります。
主菜の工夫
ひき肉料理(そぼろ・ハンバーグ)、卵料理、豆腐や納豆、白身魚の煮付けなど、やわらかくてたんぱく質がとれるものを
副菜の工夫
野菜は小さく切って、煮る・蒸すでやわらかく。具だくさんのみそ汁やスープにすると、一品でたくさんの食材がとれます
乳製品の活用
ヨーグルトやチーズは、噛む力に関係なくたんぱく質とカルシウムを補えます
ただし、これらはあくまで「応急処置」です。
やわらかい食事の工夫だけでやり過ごしてしまうと、噛めない原因はそのまま残ります。
大切なのは、「噛める環境」を整えること
食事の工夫とあわせて大切なのは、噛みにくさの原因を確認し、今のお口の状態に合った噛める環境を整えることです。
歯の痛みやむし歯・歯周病の治療、合っていない入れ歯の調整、定期的なお口のチェック。
口内の状態を整えてしっかり噛める環境を維持することは、栄養バランスの良い食事を続けるための土台です。
そして、全身の健康を維持するためにも、「噛めること」はとても大切です。
「入れ歯が合っていない気がする」「最近、硬いものを避けている」「離れて暮らす家族の食が細くなってきた」——そんな心当たりがある方は、我慢したり様子を見たりせず、一度ご相談ください。
よくある質問
まとめ:噛める口が、栄養と健康の土台
噛む力が落ちると、食事は知らないうちに炭水化物へ偏り、たんぱく質やビタミン・ミネラルの不足につながります。
やわらかい食材の工夫は大切な応急処置ですが、あわせて、噛みにくさの原因を歯科で確認し、今の状態に合った噛める環境を整えていくことが大切です。
しっかり噛めるお口を保つことは、バランスの良い食事を続けるための、いちばんの土台。
全身の健康のためにも、「噛めること」を大切にしていきましょう。
当院には管理栄養士が在籍しており、お口の治療とあわせて、毎日の食事についてもご相談いただけます。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うような小さな疑問でも大丈夫です。
噛みにくさや入れ歯の不具合、ご家族の食事のことが気になる方は、大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室までお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
文:竹内(たけうち)
大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室 管理栄養士・歯科助手
管理栄養士として食べ物と体の関係を、歯科助手として毎日の診療の現場で見るお口の健康を、両方の視点から学び続けています。
診療室での栄養相談の経験をもとに、毎日の食事から始められるお口の健康づくりをお伝えしています。
この記事の監修者
小林 伸(こばやし しん)
大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室 理事長・院長
日本歯科大学生命歯学部を卒業後、日本歯科大学付属病院での臨床研修を修了。
2016年に医療法人社団KDSを設立し、理事長に就任。
所属・認定・資格等:ITI公認インプラントスペシャリスト、日本臨床歯周病学会 歯周病認定医、日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医、インビザライン・ドクター、介護支援専門員
本記事のうち、歯・入れ歯・お口の組織に関する医療的な記述は、歯科医師である小林が監修しています。
栄養に関する解説は、管理栄養士の竹内が担当しています。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(たんぱく質の推奨量・エネルギー産生栄養素バランス)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補」(食品中のたんぱく質量)
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/
厚生労働省 e-ヘルスネット(オーラルフレイル・低栄養等の解説)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
実際の治療方針・栄養指導は、診査診断のうえで個別にご提案いたします。
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