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歯茎が下がるのはなぜ?

   

歯ぐきと歯の根の位置

Q.最近、歯が前より長くなった気がして、根元のあたりが冷たいものでしみます。

下がってしまった歯ぐきは、歯みがきやマッサージで元に戻せますか?

A.一度下がった歯ぐきを、歯みがきやマッサージだけで元の高さへ戻す方法は、公的機関や学会の資料には示されていません。

ただ、そこで終わりではありません。歯ぐきが下がる背景には、強すぎるブラッシング、歯周病、噛み合わせや食いしばり、加齢、歯を動かす力といった原因があり、そのどれが関わっているかによって、これから先の進み方は変わってきます。

「戻す」ではなく「これ以上下げない」を目標に置くと、できることがはっきりしてきます。

気になる変化があれば、一度歯科でご相談ください。

みなさん、こんにちは。大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室で歯科医師をしている秋野です。

執筆者 秋野 友希

「歯ぐきが下がってきた気がする」「歯が前より長く見える」——診療室でも、外来でよくうかがうご相談のひとつです。

検索するときには「歯茎が上がる」と打つ方もいらっしゃいますが、どちらも同じ状態を指しています。

そして、いちばん知りたいであろうことから先にお伝えします。一度下がった歯ぐきを、日常のケアだけで元の高さへ戻す方法は、公的機関や学会の資料には示されていません。

ですからこの記事の目標は、「戻すこと」ではなく「これ以上下げないこと」に置いています。

歯ぐきが下がる原因は、大きく5つです。強すぎるブラッシング、歯周病、噛み合わせと食いしばり、加齢、そして矯正治療など歯を動かす力。この5つのどれか、あるいは複数が重なっていることがほとんどです。

この記事では、その見分け方と、今日から変えられること、そして歯科では何を調べて何をするのかまでを、公的機関・学会の資料をもとにお話ししていきます。

「歯茎が上がる」と「歯茎が下がる」は、同じ状態を指しています

まず、言葉の整理からです。

上の歯なら歯ぐきの縁が上へ、下の歯なら下へ移動していくため、見え方によって「上がる」とも「下がる」とも表現されますが、起きていることは同じです。

歯科では、この状態を歯肉退縮(しにくたいしゅく)と呼びます。

日本歯科医学会の資料では、歯肉退縮は「歯肉辺縁が根尖側に移動し、歯根表面が露出した状態」と定義されています。かみくだいて言えば、歯ぐきの縁が下がって、歯の根の部分が見えてきた状態です。

この記事では以下、「歯ぐきが下がる」で統一してお話しします。

ご自身に当てはまるかどうかは、鏡の前で30秒あれば見当がつきます。

以前より歯が長く見える、歯の根元だけ色が濃く黄色っぽい、歯と歯の間に食べものがはさまるようになった、冷たいものや歯ブラシがしみる場所がある、歯ぐきの縁を触ると段差やへこみを感じる——このあたりが、歯ぐきの縁の位置が変わってきたときに気づきやすい変化です。

根元の色が濃く見えるのは、露出した歯根の色がエナメル質より濃いためで、しみるのは、その内側にある象牙質(ぞうげしつ=エナメル質の内側の層)が表に出てきているためです。

ひとつでも当てはまれば、この記事の続きがお役に立つと思います。

なお、これはよくあることです。恥ずかしいことでも、手入れをサボった証拠でもありません。

むしろ、まじめに磨いてきた方ほど起こりやすい原因があります。それが、このあとにお話しする5つの原因のひとつめです。

下がった歯ぐきは自然には戻らない・目標はこれ以上下げないこと

まず結論:下がった歯ぐきは自然には戻りません。目標は「これ以上下げない」こと

歯ぐきの縁の位置は、その下にある歯槽骨(しそうこつ)=歯を支えている骨の高さと連動しています。

歯周病が背景にある場合は、この骨がすでに減っていることがあります。

厚生労働省 e-ヘルスネットは、歯周病では歯周病原菌の毒素が歯槽骨を溶かしていき、その結果として歯がグラグラしたり歯肉が下がってきたりする、と説明しています。

つまり、見えている歯ぐきの下で起きた変化が、歯ぐきの縁の位置となって表れているわけです。

加齢による変化についても、日本歯科医師会の解説サイト「テーマパーク8020」が「健康な歯肉でも加齢によってある程度歯肉が退縮することは避けることができません」と述べています。

ですから、下がった歯ぐきを日常のケアだけで元の高さへ戻す、という方向には現実的な手段がありません。

歯みがきやマッサージで元の高さに戻すこと、減った歯槽骨が自然に再生すること、市販品だけで下がった分を回復させること、放置したまま自然によくなること——これらは期待しにくいところです。

一方で、取り組めることははっきりしています。

原因になっている力や炎症を取り除くこと、進行の速さをゆるめることを目指すこと、露出した根元のむし歯予防に取り組むこと、しみる症状への処置を相談すること。この4つは、原因を絞り込めれば現実的に狙える範囲です(進み方や結果には個人差があります)。

ここから先の目標は「戻す」ではなく「これ以上下げない」。

そう置き換えると、やることがはっきりしてきます。

歯ぐきが下がる5つの原因

歯ぐきが下がる5つの原因

ひとつめは、強すぎるブラッシングです。

いちばん多く、そしていちばんご本人が気づきにくい原因でもあります。

日本歯科医師会「テーマパーク8020」は、知覚過敏の予防法として「歯の根部の象牙質の露出を防ぐには歯周病の予防に努めることと、歯肉の退縮が進みやすいような不適切な歯みがき法をしないこと」を挙げています。

問題になりやすいのは、力が強い(磨いている最中に毛先が横へ広がっている)、毛が硬い(「かため」を長年使っている)、横に大きく往復させる(1回のストロークが2〜3歯ぶん動いている)——この3つが重なったときです。

よく磨けている方ほど陥りやすい、というのがこの原因の厄介なところです。

汚れを落とそうという気持ちが、そのまま圧になってしまいます。

ふたつめは、歯周病です。

歯と歯ぐきの境目にプラーク(歯垢=細菌のかたまり)が残ると、歯ぐきが炎症を起こします。

日本歯科医学会の資料は、歯周病を「主に歯周病原細菌により引き起こされる感染性炎症疾患であり、歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)の破壊を伴う」と説明しています。

歯槽骨が減れば、その上にある歯ぐきの縁も下がっていきます。

歯周病は、特別な病気ではありません。

厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査によると、4mm以上の歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝が深くなったもの)がある人の割合は全体で47.8%で、年齢別では30〜34歳で27.2%、55〜59歳で54.0%でした。歯ぐきからの出血がある人は全体で42.9%です。

やっかいなのは、e-ヘルスネットが指摘するとおり、歯周病はとくに初期の段階では自覚症状がほとんど出ない点です。

「痛くないから大丈夫」は、この病気に関しては当てになりません。なお、喫煙もリスク要因として知られており、e-ヘルスネットには「喫煙者は非喫煙者と比較し歯周病に3倍以上罹りやすい」と記載されています。禁煙が難しい方でも、清掃と定期的な確認の頻度を上げるという打ち手は残っています。

みっつめは、噛み合わせ・食いしばり・歯ぎしりといった、力の要因です。

歯に強い力が繰り返しかかると、その力は歯ぐきと歯槽骨にも伝わります。

日本歯科医学会の資料は、歯周病に含まれるものとして咬合性外傷(こうごうせいがいしょう=強い噛む力によって歯を支える組織が傷つくこと)を挙げ、「歯周炎に、ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)による咬合性外傷が合併すると病変が急速に進行し短期間に重度の歯周炎へと発展しやすい」としています。

これは脅すための話ではなく、打ち手があるという話です。同じ資料は、この場合の対応として、原因となる早期接触部だけを削る小範囲の咬合調整(噛み合わせの微調整)や、オクルーザルスプリント(歯ぎしりに対する咬合床=就寝時に装着する装置)の装着を挙げ、経過を観察するとしています。

日中に上下の歯が接触したままになっている、朝起きたときにあごが疲れている、詰め物がよく外れる——こうした方は、力の要因が関わっている場合があります。

歯ぐきの問題なのに、答えが噛み合わせ側にあることは、珍しくありません。

よっつめは、加齢です。

日本歯科医師会「テーマパーク8020」も「歯肉の位置は加齢とともに少しずつ下がってきます。それに伴って歯の根っこが露出し、象牙質がむき出しの状態になります」と説明しています。

これはある程度は生理的な変化で、「病気だから止めなければ」というものではありません。

ただし、加齢による変化と、歯周病や強い力による変化は、見た目がよく似ています。どちらなのかは検査をしないと区別がつきません。ここが、自己判断で決めないほうがよいいちばんの理由です。

いつつめは、矯正治療など、歯を動かす力です。

矯正治療の前後で、歯ぐきの位置の変化に気づく方がいらっしゃいます。歯を動かす治療である以上、歯ぐきと歯を支える骨の状態を、始める前に把握しておくことに意味があります。当院では矯正のご相談をお受けするとき、治療前に歯ぐきの厚みと歯を支える骨の状態を確認しています。

なお、日本矯正歯科学会は、矯正歯科治療について、デメリットも含めて矯正歯科医から詳しく説明を受けたうえで治療を受けるかどうかを決めることをすすめています(これは学会が歯肉退縮のリスクについて述べているという趣旨ではなく、治療全般についての一般的な推奨です)。

矯正を検討中の方は、ご自身の歯ぐきと骨の厚みはどうか、歯を動かす計画のなかでどの歯に注意が必要か、この2点を治療を始める前に担当医にご確認ください。遠慮すべき質問ではなく、聞いておくべき質問です。

どれが主役かを見分けるヒントもお伝えしておきます。

歯ブラシが1か月経たずに広がる、あるいは特定の1本だけ深く下がっているならブラッシング圧を、出血や口臭があり全体的に下がっているなら歯周病を、朝あごが疲れる・歯にヒビやすり減りがあるなら力の要因を、ゆるやかに全体が変化しているなら加齢を、矯正中や矯正後で歯を動かした部位に集中しているなら歯を動かす力を、それぞれまず疑うことになります。

これ以上下げないために今日から変えられること

これ以上下げないために、今日から変えられること

原因の絞り込みは歯科での検査が必要ですが、その前に、ご自身で今日から変えられることが3つあります。

どれも道具を買い足す必要はありません。

ひとつめは、歯ブラシの持ち方を鉛筆持ちに変えることです。

握りこむ持ち方(パームグリップ)は、どうしても力が入ります。鉛筆を持つように持つだけで、かかる力は落ちます。

目安はシンプルで、磨いている最中に毛先が横へ広がっていたら強すぎる、です。

鏡で一度だけ確認してみてください。歯ブラシの当て方は、歯と歯ぐきの境目に毛先を触れさせて、小刻みに動かす。1回のストロークは歯1本ぶんで十分です。

ふたつめは、フロス・歯間ブラシをサイズを合わせて使うことです。

歯と歯の間の清掃は歯ぐきを守るうえで欠かせませんが、日本歯周病学会の歯周病Q&Aには、使用方法を間違えると歯肉を傷つけたり、退縮させたりすると明記されています。

とくに歯間ブラシは、太すぎるものを無理に通すと逆効果になり得ます。

サイズ合わせは、歯科衛生士に一度みてもらうのが確実です。合っていないサイズを使い続けると、かえって歯ぐきを傷つけることがあります。

みっつめは、フッ化物入りの歯みがき剤で、露出した根元を守ることです。

歯ぐきが下がって露出した歯の根は、守り方が変わります。

日本歯科医学会「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」(令和6年3月)では、ホームケアとして1日2回の歯みがき、歯間ブラシ・デンタルフロスの使用、フッ化物配合歯磨剤(1,450ppm F)の使用、フッ化物配合洗口剤の併用が挙げられています。

お使いの歯みがき剤のパッケージの成分表示で、フッ化物(フッ化ナトリウム等)の濃度を一度確認してみてください。

歯ぐきが下がると起きること

歯ぐきが下がると、何が起きるのか

歯ぐきが下がると、見た目の変化だけでなく、お口の中で守り方を変えたほうがよい状況が生まれます。

代表的なものが、しみる症状と、根元のむし歯です。

まず、しみる症状(知覚過敏)です。

歯の根の部分は、噛む面のような硬いエナメル質に覆われていません。日本歯科医師会「テーマパーク8020」は「象牙質は痛みを感じる部分」であり、様々な理由で象牙質が露出すると刺激が神経に伝達されやすくなって知覚過敏が生じる、と説明しています。歯ぐきが下がって根が見えてくるのは、その「様々な理由」のひとつです。

しみる症状については、原因の見分け方と受診の目安を別の記事にまとめています。

→ 甘いものやガムで歯がキーンとしみる|知覚過敏の原因・見分け方と受診の目安

次に、露出した根元は、むし歯のでき方が変わります。

日本歯科医学会「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」は、根面う蝕(こんめんうしょく=歯の根の表面にできるむし歯)について、「加齢や歯周病に伴い露出した歯根面に生じる」「歯根面の耐酸性は、エナメル質と比較して低いため罹患しやすく、また、う蝕病変の辺縁や深度も不明瞭な病態を示す」と説明しています。リスク因子としても歯肉退縮が挙げられています。

これは怖がるための情報ではなく、守り方を切り替えるサインとして受け取っていただければと思います。

同じ文書は、実質欠損の浅い初期の段階であれば、削らずにフッ化物で管理していく考え方も示しています。早く見つかるほど、選べる方法が増えるということです。

もうひとつ、歯と歯の間に三角形のすき間が見えることがあります(ブラックトライアングルと呼ばれます)。

ここは食べものが挟まりやすく、清掃の工夫が要る場所です。見た目をどう感じるかは人それぞれで、気にならない方は気にしなくて構いません。ただ、詰まりやすさが気になるなら、そこは対策のしどころです。

「歯ぐきが下がる」と「歯の根元が削れる」は、別のことです

この2つは同時に起こることが多く、混同されがちですが、起きている場所が違います。

歯ぐきが下がる(歯肉退縮)で変化しているのは歯ぐきの縁の位置、つまり軟組織です。歯が長く見える、根が見えてくる、という見え方になり、背景には歯周病・力・ブラッシング圧・加齢があります。

一方、歯の根元が削れるほうは、歯そのもの、つまり硬組織が失われています。

根元がV字・くさび状にへこむという見え方になり、背景にはくさび状欠損、アブフラクション(噛む力による歯質の欠け)、酸蝕症(さんしょくしょう=酸で歯が溶ける)などがあります。

日本歯科医学会「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」でも、露出した根面にみられる実質欠損として、くさび状欠損・アブフラクション・酸蝕症を鑑別対象に挙げています。

つまり、歯ぐきが下がったことと、露出したところが削れていることは、分けて考える必要があります。

歯の根元が削れている側については、こちらの記事で扱っています。

→ 歯の根元が削れる・すり減る原因と治療法|放置するとどうなる?

→ 歯の根元がすり減ってしまったら…

歯科での検査と対応

歯科ではどう対応するのか

歯科でまず行うのは、歯周組織の検査です。

日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)は、初診時の歯周基本検査の内容として、ポケット深さ(歯と歯ぐきの境目の溝の深さ)を1歯1点以上で測定して記録すること、BOP(ビーオーピー=探針を入れたあと30秒以内に出血してきた部位)を記録すること、歯の動揺(歯のぐらつき)を0度から3度で示すことの3つを挙げています。

これに加えて、エックス線検査で歯槽骨がどれだけ減っているかを見ます。

同じ資料は、その他の検査として咬合検査(歯列全体の噛み合わせと外傷性咬合の有無を調べる)や、口腔内カラー写真(歯肉の位置や炎症の状態を記録し、治療段階での変化を確認する)も挙げています。写真を残しておくと、「気のせいか、本当に進んでいるのか」を後から事実で確かめられます。ここで、5つの原因のうちどれが主役なのかを絞り込みます。

その後の流れも、同じ資料が歯周基本治療(歯周病の原因とリスク要因を取り除いて炎症を改善する、原因除去の治療)として示しています。

まず検査・診断を行い、結果を示して治療計画をご説明します。次にプラークコントロールとして、歯ブラシだけでなく歯間ブラシ・デンタルフロス等の併用を、その方に合わせてご案内します。そのうえでスケーリング(SC=歯石とプラークの除去)を行い、必要に応じて咬合調整、暫間固定、ブラキシズムへの対応(オクルーザルスプリント等)といった外傷性因子への対応を組み合わせます。

スケーリングのあとにもう一度検査を行い、効果を確かめてSRP(ルートプレーニング=歯ぐきの内側の歯根面についた汚れ・歯石を取り、滑らかにする処置)へ進むか、継続管理へ進むかを決めます。

SRPのあとにも再び検査を行い、これが再評価となって治療計画を修正します。その先は、歯周病重症化予防治療・SPT(歯周病安定期治療)・メインテナンスといった継続管理に移ります。

つまり、1回で終わる処置ではなく、「調べる→取り除く→もう一度調べる」を回していく形です。

同じ資料は、歯周病は再発や重症化しやすい疾患であることから、継続管理が不可欠であるとしています。なお、歯周組織の検査や歯石の除去には、公的医療保険の範囲で行われるものがあります。適用は状態や経過により異なりますので、受診時にご確認ください。

どこまで変えられるかは、原因によって違います。

同資料は「原因除去によって歯肉炎や歯周炎は改善あるいは進行停止する」としている一方で、中等度以上の歯周炎では歯周外科治療や口腔機能回復治療を要する場合が多く、より複雑な治療が必要になるとも書いています。だからこそ、まず検査で「どの原因が主役か」「どのくらいの速さで進んでいるか」を確定させることが先になります。

しみる症状への対応についても触れておきます。

日本歯科医師会「テーマパーク8020」は、知覚過敏の治療法として、再石灰化を促す方法(軽度なものは期間が経過すると自然に消失することもよくあり、唾液や歯みがき剤の再石灰化成分で象牙質の微細な空隙が封鎖されてくるためと考えられる、とされています)、歯の神経の興奮を抑える方法(歯みがき剤に硝酸カリウムという成分を含ませ、継続して使うことで知覚過敏の改善効果があることが確かめられている、とされています)、露出部分の内部の空隙を封鎖する方法(歯科医院で材料を塗布する方法のほか、結晶の形成を促進する成分を含む歯みがき剤もあります)、そして露出部分を被覆する方法(接着材を用いて樹脂による薄い皮膜を形成するのが通例とされています)を挙げています。

同じ解説は、歯みがきを十分に行わないとプラークが付着し、知覚過敏はむしろ悪化することも考えられるとして、「知覚過敏の改善にも歯みがきはとても重要」とも述べています。

しみる場所と程度によって選択が変わるため、実際の方法は診察のうえでご説明します。

よくある質問

Q. 歯ぐきのマッサージや体操で、下がった歯ぐきは戻りますか?

A. 下がった歯ぐきを元の高さへ戻す方法としては期待できません。

歯みがきやマッサージで歯ぐきの位置を戻せるとする公的機関・学会の資料は見当たりません。

ただし、炎症や強い力といった原因を取り除くことで、進行がゆるやかになる場合があります。日本歯科医学会の資料は「原因除去によって歯肉炎や歯周炎は改善あるいは進行停止する」としています。どこまで変えられるかは、原因と現在の状態によって異なります。

Q. 電動歯ブラシだと歯ぐきが下がりやすいですか?

A. 手用か電動かよりも、押しつける力のほうが問題になります。

電動歯ブラシは自分で動かす必要がないので、歯に軽く触れさせるだけで十分です。強く押し当てているかどうかを、一度鏡で確認してみてください。

使い方に不安があれば、実際に使っているものをお持ちいただければ、その場で一緒に確認できます。

Q. 20代でも歯ぐきは下がりますか?

A. あります。

歯ぐきが下がる原因のひとつである歯周病について、令和6年歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケットがある人の割合は15〜19歳で21.2%、20〜24歳で26.4%でした。

これは歯ぐきの下がり方そのものを調べた数値ではありませんが、若い世代でも歯ぐきの炎症が珍しくないことは示しています。年齢だけを理由に「まだ大丈夫」と判断しないほうが安全です。

Q. しみるので、その部分を磨かないほうがいいですか?

A. 磨かないでいると、その場所にプラークが残り、露出した根がむし歯になりやすい状況が続きます。

日本歯科医師会の解説も、歯みがきを十分に行わないと知覚過敏はむしろ悪化することも考えられる、としています。磨き方を変えるのが答えです。

やわらかい歯ブラシで、力を抜いて、フッ化物入りの歯みがき剤を使う。それでも痛みで磨けないときは、我慢せず受診してください。

Q. 歯ぐきが下がると、いずれ歯は抜けてしまいますか?

A. 「下がった=抜ける」ではありません。

原因が加齢によるゆるやかな変化であれば、経過をみていくことになります。一方で、歯周病が背景にある場合は、進行を抑えることが目標になります。

8020推進財団は、歯を失う原因の約66%がむし歯と歯周病であるとしています。むし歯と歯周病の管理が、歯を守るうえで大きな比重を占めるということです。

まとめ・ご相談のご案内

歯ぐきが下がる原因は、強すぎるブラッシング、歯周病、噛み合わせと食いしばり、加齢、歯を動かす力の5つです。

一度下がった歯ぐきを日常のケアだけで元の高さへ戻す方法は示されていませんが、原因を絞り込めば、「これ以上下げない」という目標は現実的に狙える範囲に入ってきます。

受診の目安もお伝えしておきます。

以下の日数は当院が目安としているもので、統計値ではありません。迷ったときの物差しとしてお使いください。

歯みがきのときに出血する日が2週間以上続いているとき、冷たいものがしみる状態が2週間以上続いている、または痛みが強くなっているとき、特定の1〜2本だけ明らかに歯ぐきの位置が下がっているとき、歯ぐきの縁を触ると痛い、または歯がグラつく感じがあるとき、1年以上歯科で歯ぐきの検査を受けていないとき、そして矯正治療を検討しているが歯ぐきや骨の厚みの説明をまだ受けていないとき——このいずれかに当てはまるようでしたら、一度みてもらってください。

いずれも当てはまらない方も、変化の速さを知るために記録を残しておくことをおすすめします。

スマートフォンで、口角を軽く引いて前歯の写真を1枚。半年後に見比べると、感覚ではなく事実で判断できます。

大崎・五反田周辺からお越しの方に、ご相談の際に持ってきていただけると助かるものが3つあります。

ひとつめは、いま使っている歯ブラシそのものです。毛先の広がり方が、かかっている力を教えてくれるので、新品よりも使い込んだもののほうが役に立ちます。ふたつめは、歯みがき剤とデンタルフロス・歯間ブラシ。フッ化物の濃度とサイズを一緒に確認します。みっつめは、ふだんの飲みものと間食のメモで、3日ぶんで十分です。

3つめを挙げるのには理由があります。

当院には管理栄養士5名が常勤しており、歯科医師・歯科衛生士とは別の角度から、酸性の飲料や間食の「回数と時間帯」を一緒に見ています。日本歯科医学会の資料が示すとおり、露出した歯の根はエナメル質と比べて酸に弱いため、何を口にしているか以上に、1日に何回・どのタイミングで口にしているかが効いてきます。

歯ぐきが下がったというご相談から、飲みものの飲み方の話になることは、当院ではよくあります。

目指しているのは症状を減らすことだけではなく、食べたいものをこれからも食べ続けられる状態を保つことです。定期検診・予防歯科(https://oval-dc.net/preventive-dentistry)や、管理栄養士による栄養相談(https://oval-dc.net/nutritionist)も承っておりますので、お気軽にお声がけください。

ご予約・お問い合わせは、下記からどうぞ。

初診ネット予約:https://oval-dc.net/reservation

お電話:03-5739-1625

アクセス:JR大崎駅 徒歩4分/東京都品川区東五反田2-16-1 ザ・パークタワー1F

この記事を書いた人

執筆者 秋野 友希

秋野 友希(あきの ゆうき)/大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室 歯科医師

患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせた、丁寧でわかりやすい説明を心がけています。

本記事は歯科医師である秋野が執筆し、理事長・小林の監修を受けています。

監修者

監修者 小林 伸

小林 伸(こばやし しん)/大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室 理事長・院長(歯科医師)

2016年に医療法人社団KDSを設立し、理事長に就任。

所属・認定・資格等:ITI公認インプラントスペシャリスト、日本臨床歯周病学会 歯周病認定医、日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医、インビザライン・ドクター

本記事は、理事長・院長の小林が監修しています。

参考文献

・厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査 結果の概要」表18・表19(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-17b_r06.pdf)

・厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-001.html)

・厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の検査」(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-002.html)

・公益社団法人日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」知覚過敏(https://www.jda.or.jp/park/trouble/index12.html)

・日本歯科医学会「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」令和6年3月(https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-1.pdf)

・日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」令和2年3月(https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r02/document-200401-1.pdf)

・特定非営利活動法人日本歯周病学会「歯周病Q&A(歯周病の予防)」(https://www.perio.jp/qa/prevention/)

・公益財団法人8020推進財団「歯を失ってしまう原因と対策」(https://www.8020zaidan.or.jp/achieve/cause_measure.html)

・公益財団法人8020推進財団「8020読本 働き盛りのお口の健康」(https://www.8020zaidan.or.jp/hatarakizakari/02.html)

・公益社団法人日本矯正歯科学会「矯正歯科治療について」(https://www.jos.gr.jp/about)

免責事項

本記事は、歯ぐきが下がる状態(歯肉退縮)とお口の健康に関する一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の診断・治療・効果を確約・保証するものではありません。

症状の有無や程度、適した対応には個人差があり、進み方や結果も一人ひとり異なります。

記載した数値や受診の目安はあくまで目安であり、実際の判断には診察が必要です。

気になる症状がある場合や治療をご検討の場合は、自己判断せず、歯科医療機関で診察・相談を受けてください。

掲載内容は作成時点の情報に基づいており、最新の知見や制度と異なる場合があります。



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大崎オーバルコート歯科・矯正歯科室 理事長 小林 伸


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